- 民法相続法が改正され、令和元年7月より施行されている。
- 贈与税の納税猶予を実行する場合、贈与者が死亡した場合の相続についても検討しておく必要がある。
- 税理士は、相続税評価額による課税価格と法定相続分による分割になれているが、民法の実務では、相続税評価額ではなく、時価となり、法定相続分ではなく、民法903条を考慮した具体的相続分になる。
- 具体的相続分とは、(被相続人の財産+特別受益である贈与財産)*法定相続分-(受遺財産+特別受益である贈与財産)で計算し、被相続人の財産を、この具体的相続分で分割します。一般的に特例後継者は0です。
- この具体的相続分による分割の場合も、遺留分がある場合は遺留分を計算します。
- 先行して自社株の贈与が行われた場合に、被相続人の遺言がない場合は、上記の具体的相続分で計算し、被相続人の遺言がある場合は、遺言により、その後遺留分の計算になります。
- 遺留分算定基礎財産は、被相続人の財産+死亡以前の10年以内の特別受益+10年より前の損害贈与財産-債務となり、これに法定相続分*1/2の遺留分割合=個別的遺留分を計算します。(自社株贈与は、その相対的金額の大きさから、10年前であっても、損害的贈与として持ち戻しの可能性が強いです。)
- 実際の取得財産-個別的遺留分がマイナスの場合、遺留分侵害額が発生し、この差額がプラスの相続人に対して請求します。民法1046条により取得財産-個別的遺留分を限度として、民法1047条の順番に従い負担します。
- ここで、税理士はこの負担について按分計算に入りがちですが、この負担は按分ではなく、民法1047条に負担の順番が決められているので、これに従います。ざっくり受遺者→最近の受贈者→古い受贈者です。(自社株の贈与は、実務的には最も古い贈与の可能性が大です。)
- 以上の順番で遺留分侵害額を負担し、遺留分義務者=負担者は相続税法32条により、更正の請求に入ります。
- この更正の請求と、遺留分権利者の修正申告では、この遺留分侵害額の時価を、相続税の課税価格に準じて圧縮計算を行います。この法的根拠は代償分割の相基通11の2-9,11の2-10の考え方になると考えられます。
- 贈与者の死亡により、相続税の納税猶予を受けている場合、特例後継者は、相続税額と納税猶予額の計算上、この負担する債務の計算ですが、平成25年度改正の趣旨(同解説p619)の被相続人の債務控除に準じて、計算することが考えられます。
- 参考文献 before/after相続法改正 潮見佳男他編 弘文堂
民法相続法改正と税理士実務
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