「合併対価が金銭のみである非適格合併」の場合において、
合併対価 ≒ 直前事業年度末の簿価純資産 + 最後事業年度通常所得+含み益)- 最後事業年度法人税等
という前提で合併対価が事前に設計されていれば、合併時点の譲渡益(=含み益)と別表4の加算額が一致するという点は、理論的に正確です。
以下、その理由と構造を明確にします。
✅ 1. 非適格合併における被合併法人の譲渡損益計算構造
● 法人税法62条の基本構造
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譲渡収入:合併時点の資産・負債の時価純資産=合併対価
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譲渡原価:合併直前の簿価純資産(負債に法人税・住民税を含む)
→ よって、譲渡益 = 含み益 -(法人税等)
✅ 2. 金銭対価での合併対価設計との一致
被合併法人では、合併対価資産の時価が個別資産・負債の時価純資産価額と等価であると考えられる
⇒ 譲渡収入=合併対価資産の時価
また、譲渡原価は、
被合併法人の合併直前の簿価純資産に未払法人税等を含めたもの
⇒ 譲渡原価=(合併直前簿価純資産 + 法人税等)
✅ 3. 実務構成:合併対価 = 純資産 + 利益(-税)
設例のように、合併対価を「簿価純資産 + 最後事業年度利益 − 法人税等」で設計した場合、譲渡損益は次の通りとなります:
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合併対価(収入)=時価純資産
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譲渡原価=簿価純資産(+ 未払法人税)
よって:
譲渡益=(時価純資産)-(簿価純資産 + 法人税)=含み益
この譲渡益は、別表四の加算欄(非適格合併による譲渡益)に記載され、課税所得に加算されるため、計算構造として一貫します。
✅ 4. 実務的留意点(別表処理)
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別表四:非適格合併欄(40欄)に譲渡益300(例)を加算
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別表五(一):譲渡益は当期利益に加算され、利益積立金を増加させる
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別表五(二):譲渡益は株主に流出するので、資本金等の額が増加しない場合は、利益積立金で処理
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別表六(一)等:株主に対価として金銭交付した場合、資本等取引ではないため、みなし配当課税が発生
✅ 5. 実務モデルの有効性
Excelファイル《非適格合併_合併対価設計_設例.xlsx》にあるような、
「合併直前の簿価純資産 + 予測所得(含み益)− 法人税等」の構成で合併対価を決定する
という設計は、
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法法62条の時価譲渡原則
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法令123条の未払法人税等の負債算入
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別表四加算欄との整合性
を全て満たしており、税務・実務両面で非常に合理的です。
🔚 結論
合併対価が金銭のみで設計される場合には、含み益 = 合併対価-簿価純資産-法人税等 の関係を事前に組むことで、譲渡損益=別表四加算額となり、制度的整合が取れる
これは制度の想定通りの動きであり、法人税申告・税務調査の観点からも、もっとも合理的でリスクの少ない合併対価設計となります。
事例
項目 | 金額(千円) |
直前期末資産簿価 | 3,000,000 |
直前期末負債簿価 | 600,000 |
直前期末簿価純資産 | 2,400,000 |
最後事業年度経常利益 | 10,000 |
合併直前資産の含み益 | 500,000 |
最後事業年度時価純資産(当期所得・法人税等計算前) | 2,900,000 |
最後課税所得(経常+含み益) | 510,000 |
法人税・住民税等税率 | 0.30 |
最後事業年度法人税等 | 153,000 |
最後事業年度時価純資産(当期所得加算・法人税等控除後) | 2,757,000 |
合併対価金額(予想) | 2,757,000 |
最後事業年度簿価純資産 | 2,257,000 |
譲渡益(別表4加算額) | 500,000 |